カナダ歴10年のCollie(コリー)です。
私は日本で生まれ育ち、約10年前にカナダに移住しました。現在は、カナダ最大の都市トロントがあるオンタリオ州に住んでいます。
そんな私が、今回は日本とカナダの医療システムを比較しました。
- 医療費はどのくらいかかるの?
- カナダの医療システムが分からない
- 医療に関する英単語を知りたい
と思っている方に、参考になると思います。
※カナダ国内でも、州によって異なる場合があります。
※最終的な判断は、ご自身でお願いします。
日本とカナダの医療を比較
さっそくカナダの医療について、私が日本と大きく違うなと感じた点を3つに分けて紹介します。
- 医療費は条件により無料!でも…
- 専門医には必ず「紹介状」が必要
- 血液検査やエコーは単独の施設にて
1点ずつ、解説していきます。
医療費は条件により無料!でも…
カナダには「Medicare(メディケア)」という、公的な医療制度が存在します。
そのため下記いずれかに当てはまる方は、在住の州が提供する保険に加入できます。
- 市民権保持者(Citizen)
- 永住者(Permanent Resident)
- 永住権申請後、承認待ちの方
- 長期の就労ビザ保持者
- 長期の就労ビザ保持者の家族
州の保険に加入すると、風邪や発熱による診察、骨折による手術、妊娠・出産、病気による入院やその間の投薬はすべて無料です。
実際に私もカナダに住む10年の間に、何度も医療にかかりました。風邪を引いたり、緊急外来(ER=Emergency Room)に行ったり、妊娠・出産を経験したり、予防接種を受けたり…。
でも永住権を取得してからは、毎回オンタリオ州の保険(OHIP)を提示することで、病院でお金を支払ったことは一度もありません。
州の保険でカバーされないもの
例外もあります。下記は州の保険でカバーされず、自費になります。
- 処方箋による薬
- 眼科検診(子供や高齢者を除く)
- 歯科検診・虫歯の治療
- 理学療法やリハビリ 等
※目のケガなどは、年齢を問わず州の保険でカバーされます。
会社勤めの方であれば、州の保険がカバーしない部分を、会社がベネフィットとしてカバーしてくれることも多いです。
しかし歯医者に関しては、朗報があります。
子供は2024年から、大人も2025年から、国が歯科検診や虫歯治療にかかる費用の一部もしくは全額を負担してくれる「Canadian Dental Care Plan(※)」が始まります。
収入の上限やベネフィットの有無など条件がありますが、今まで自費で歯医者に行っていた方は必ず確認してくださいね!
※前年度の税金をカナダに納めている、長期滞在者向けです。
州の保険が無い場合の医療費
次にカナダの短期滞在者や学生の方など、州の保険の対象ではない方について。
この場合、すべて自費で支払うか、民間の保険に加入することになります。
目安として自費でカナダの医療費を支払うとすると、このような金額になります。カナダドル表示です。
クリニックでの診察 | 1回$150~200 |
大部屋に入院 | 1泊$1,500~ |
救急車の利用 | 1回$240(トロント) 1回$500(バンクーバー) |
(ブリッジス・インターナショナル保険サービスより引用)
例えば雪で滑って骨折してしまい、手術+1週間の入院となった場合、100万円超の請求が来る可能性もあるのです。
数日の観光、数か月の語学留学、1年のワーホリ、どんな期間のカナダ滞在であっても、民間の保険への加入を強くおすすめします。
専門医には必ず「紹介状」が必要
日本では、風邪を引いたら内科、耳が痛ければ耳鼻科、足を捻挫したら整形外科など、自分で行くべき科を決めて足を運べますよね。
実はカナダでは、それができません。
風邪を引いても、耳が痛くても、足を捻挫しても、まずは自身のファミリードクターもしくはウォークインクリニックに行くんです。
かかりつけ医。基本は各患者1人のファミリードクターに登録可。既往歴や予防接種歴も管理してくれる。州の公式ホームページもしくは家族や友人の紹介で見つける場合が多い。
ファミリードクターや保険の有無にかかわらず、誰でも足を運べるクリニック。予約が必要かどうかはクリニックによる。
そしてファミリードクターやウォークインクリニックのドクターが、必要に応じて専門医への紹介状を書いてくれるというわけです。
その紹介状があって初めて、例えば耳鼻科、循環器科、整形外科などの専門医に会えるのです。
ただでさえ医療従事者が不足しており、診察までの待ち時間が長いと言われるカナダ。
特に専門医による診察は、本当にその医療を必要とする患者さんに限定する狙いがあるのでしょう。
緊急時は ER(=Emergency Room)へ
緊急で医者に診てもらいたい、数分や数時間を争う症状がある、という場合は迷わず ER(=Emergency Room)に行きましょう。
ERは、日本でいう救急外来のような場所。救急車も ER に行きます。
カナダでは、ERも待ち時間の長さが深刻化しています。
ただしトリアージ(Triage)を行っており、必要に応じてその場でレントゲンやMRIを撮ったり手術をしたりもする場所なので、一刻を争う場合はERに行きましょう。
治療を必要とする患者が多数いる場合、緊急度によって診療の優先順位を決めること。
血液検査やエコーは単独の施設にて
日本ではクリニックに行くと看護師さんが血液検査をしてくれたり、整形外科に行くとその場でレントゲンを撮ってもらったりできますよね。
カナダでは違います。
血液検査、エコー、レントゲンなどには、独立した検査施設があり、そこへ行くにも「紹介状」が必要なんです。
専門医に会うまでの流れと同じく、まずはファミリードクターやウォークインクリニックにて診察してもらうのです。
血液検査については、カナダではDynacareとLifelabsという大きな会社があります。
ここで血液検査を行うと、患者自身がオンラインで結果を閲覧できます。早ければ同日夜や翌日朝に結果が出るので、これはとても良いシステムだと感じます。
検査結果はどちらにしても、紹介状を出した医者に送られます。
そして追加で検査が必要な場合や、専門医に診てもらう必要がある場合は、連絡が来るシステムです。
病院でよく聞く英単語
最後に、カナダの医療施設でよく聞く単語を紹介します。
ファミリードクター | family doctor |
研修医 | residency doctor |
ウォークイン クリニック |
walk-in clinic |
血液検査 | blood work / blood draw |
レントゲン | X-ray |
エコー | ultrasound |
紹介状 | requisition form / referral letter |
救急外来 | ER (=Emergency Room) |
各専門医の呼び方
最後に私も最近まで知らなかった、各専門医の英語名です。
ファミリードクターやウォークインクリニックを訪れる際に、紹介してほしい科があれば積極的に伝えましょう。
内科 | physician |
耳鼻科 | otolaryngologist |
眼科 | optometrist / ophthalmologist |
整形外科 | orthopedic surgeon |
小児科 | pediatrician |
産婦人科 | gynecologist |
皮膚科 | dermatologist |
理学療法士 | physiotherapist |
整体師 | chiropractor |
歯医者 | dentist |
はり師 | acupuncturist |
まとめ
日本とは異なるカナダの医療システムや、母語ではない英語での診察に、不安を覚える方も多いと思います。
特に場所によっては待ち時間がとても長かったり、なかなかファミリードクターが見つからなかったりという問題点もあります。
ただカナダの医療には良い面もあると、私は思っています。
- 枝分かれしたシステムのおかげで、各医者の専門性が高い
- 精神的に患者に寄り添ってくれる医者が多い
- 州の保険対象者は、妊娠・出産が無料(無痛分娩を含む)
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ただし持病がある方や、大きな病気が見つかった方にとっては、話は別かもしれません。
ご自身にとって、日本もしくはカナダのどちらで医療を受けるのがベストなのか、常に考える必要があると思います。
そして州の保険が対象でない方は、必ず民間の保険に入りましょう。
さらにカナダでは、医療に限らず「言った者勝ち」という側面があります。英語力や交渉力を向上させることで、必要な医療に辿り着けるケースも珍しくありません。
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みなさんが、少しでもカナダの医療システムを知るきっかけになっていると幸いです。